不二家の品質不正を学ぶ
「不二家からなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
どんな優良企業であれ、社会の反感を買うと、倒産など社会から消されてしまうことを目の当たりにしたからです。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
経営課題として全社的な問題です。
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
●2007年とかなり前ですが、不二家はちゃんとサイトに残しています。自らの失敗を隠さず残す姿勢は立派です! さすが「不二家」です!素晴らしい!
●参照リンク:「信頼回復対策会議」について
不正の発覚から信頼回復までの流れが分かる貴重な文献です。この文献から不正が起きた真因を解いていきましょう。
批判や貶しのマインドしかない人は記事を書く資格はありません。
品質不正の内容
●簡潔にまとめます。
(1)期限切れの原料使用問題
・洋菓子工場に期限切れの原料使用が判明。社内規定には使用禁止であったが守られていなかった。
(2)シュークリーム等の消費期限を1日超過して表示
・消費期限を工場側の判断で社内基準より1日超過して表示した。
(3)細菌検査で出荷基準の満たない「シューロール」の出荷問題
・原材料に含まれる生菌数のばらつきは元々大きいため、検査判断が甘かった。
(「品質管理の実態調査」 2007年2月27日から引用)
被害状況
被害者は、ほとんど出ていませんが、食品衛生法違反の疑いや、ISOなどの規格の要求基準に満たしていない現状が浮き彫りとなりました。
➂発覚した経緯
依頼した外部コンサルタント会社の指摘から消費期限切れに牛乳を使用されていたことを不二家に報告したのを皮切りに、同様の問題が報告されました。しかし、報告資料の一部が社外に流出して発覚したようです。
誰かが、リークしたんでしょうね。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
もう一度、不正の内容をみましょう。QCプラネッツの「ツッコミ」を入れると、その真因が見えそうです。
(1)期限切れの原料使用問題
・洋菓子工場に期限切れの原料使用が判明。社内規定には使用禁止であったが守られていなかった。
なぜ、期限切れの原料を使わないといけなかったのか?使わないといけない圧力とは何か?
社内規定があるのに、なぜルール無視なのか?
(2)シュークリーム等の消費期限を1日超過して表示
・消費期限を工場側の判断で社内基準より1日超過して表示した。
工場側が一方的に判断したのはなぜか? どんな圧が工場にかかっていたのか?
(3)細菌検査で出荷基準の満たない「シューロール」の出荷問題
・原材料に含まれる生菌数のばらつきは元々大きいため、検査判断が甘かった。
検査員、品質保証の人は、こんないい加減なことはしないが、なぜか?外圧がかかっていたのではないか?
ツッコミの記述と、フレームワーク「QCD」のQ,C,Dの観点から想像すると、
と、ピンと来ましたか?
外部環境の観点
●上の記述から、不二家は「業績不振」にあえいでいたとピンと来ますか?
・工場は良い製品を作る側で、原価管理側です。利益優先は本社の経営側です。
・期限切れなら廃棄するのが普通ですよね。でもなぜ廃棄しなかったのか?
いや、廃棄するな!という圧がかかっていたからではないでしょうか?
廃棄処理に困る場合は通常2つです。
・廃棄が厳しいもの(PCB、石綿などのヤバいもの)
・コストをかけたくない
このケースでは、「C:コスト」の圧が本社⇒工場にかかっていたと推測できます。
この悪意的な圧がかかるのは、業績不振にあえいでいるからでしょう。また、本社側の無理な利益優先主義や収益向上要求という圧力がかかっていたはずです。
組織の状況
上の事実から組織がどんな状況だったかは、次の2つが分かります。
- 経営陣(創業家)の強い支配
- 技術継承が弱い現場
経営陣(創業家)の強い支配
外部環境からは、「キツイノルマや要求が本社・経営陣」から事業部・生産現場へ圧力がかかっていた、つまり、創業家からのキツイ政治支配が見えてきます。
報告書にも書いていましたが(読まなくても分析でぴったり当てることはできますが)、
- 同族経営による、創業家の圧倒的威厳を背景とした一族支配で、忌憚(きたん)のない意見や提案がしにくい雰囲気
- 「指示されたことだけやればよい、指示されないことをやっても報われない」
- 創業家は製造現場より、商品企画・利益優先主義
ザ・古い企業って感じですよね。当然、取り巻きも、ゴマすり・ヨイショがいたり、意見がいえない職場なら、皆事実を隠したり、上への報告を躊躇するなど、雪印乳業と同じ組織の臭いがしますね。
利益優先主義になると生産現場からの依頼を本社側が拒否するでしょうね。すると当然、
・経営陣と生産現場との情報の途絶
・現場の課題が上がってこない(来るわけがない)
・生産現場の衛生・品質管理より、コストダウン・生産性向上を重視すると、不衛生に陥る
・上とうまくいかないから、責任者は嫌な情報を上に報告しなくなる。
技術継承が弱い現場
工場側で基準を変えたり、社内規定を無視した職人技で製造などが問題になっていました。なぜこうなるのでしょうか?
報告書を読むと2つ問題が浮き彫りになりました。
報告書に頼らなくても、読みながら分析すれば、大体答えは一致しますよね!
- 組織の独立性が強すぎて、工場間で基準が異なる
- 職人的な経験と勘に頼っていたが、リストラ・定年退職で技術者が減った
事実、不二家には、,
・菓子事業部と洋菓子チェーン事業本部は完全に独立。
・事業部間の情報交換・人事異動がない。
・第3者の目が入る機会がない。
でした。
仮に、工場の生産が保守点検やトラブルによって他の工場に応援が必要になった場合、独立していたら、合否基準もバラバラですよね。
そこで、A工場でOKだったのに、急遽応援で必要になったB工場ではNGとなった原料があったり、短納期という強い要求があったどうしますか? 基準を勝手に変えてA工場と同じOKで製造しちゃいますよね。
つまり、キツイ納期:Dという圧力がかかっていたため、工場側の一方的な不正が入った結果となりました。
●当然、技術継承が弱く、社内規定はあってないようなものなら、不正を止める思考が働きません。
担当レベルの動き
組織の独立性、上に報告しても意味がないなら、当然、自分の身を守るように、隠ぺい・改ざんしますよね。
また、組織のための工夫しようという気持ちは無いはず。ISO認定で社内規定を作っただけで、リストラ・退職組は何も教えず、引継ぎしないまま会社を去ったんでしょうね。
だから、技術継承ができず、社内規定を守らなくなるわけです。
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は分析できました。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
C「コスト、収益」か
D「納期、時間、手間」か
のバランスが崩れている場合がほとんど。
不二家の場合はどうでしょうか?
C「コスト、収益」の観点
Cにおいては、業績不振であったことは事実ですし、分析からもわかります。利益優先主義で経営層の強い支配力によって、生産側の衛生・品質管理が手抜きになってしまいました。
D「納期、時間、手間」の観点
工場側の一方的な不正は、コストカットの圧力はもちろん、
急遽応援製造になった場合にルールが異なるまま短納期要求が課せられたため、
上に報告することなく、不正に走ってしまいました。
⑥その後の結末
不二家から学べる教訓
不二家の批判ではなく、不二家から学べる教訓を理解して活かしましょう。
- 業績不振で利益至上主義になると、衛生・安全・品質・環境・コンプライアンスがおろそかになり、足をすくわれるリスクがある
- 創業家の支配力が強いと、強力なトップダウンでやらされ感が漂い、嫌な報告が上がりにくくなる
- 事業部の独立性、人の交流が疎だと、不正が継続され、後戻りできなくなる
- どの企業も不二家のケースになりうるから要注意!
品質不正から、これだけ経営課題を解くヒントが読み取れます!
●次に、品質不正が発生したら、どんな対応策をとるべきでしょうか?それを次に解説します。
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「不二家の品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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