IHIの品質不正を学ぶ
「IHIからなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
どの企業でも起こり得る!
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
外部環境をよく理解した上で、このケースを読むと、理解が深まります!
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
報告書があります。
●整備作業等の適正な実施に向けた是正処置について(2019/5/10)
報告書で十分分析できます。
品質不正の内容
●簡潔にまとめます。報告書P3を引用します。
①部品検査を業務規程に基づく適正な社内資格を持たない検査員が検査実施
➁所定の作業工程どおりに作業・検査しなかったにもかかわらず、実施したかのように作業記録書の検査実施日を改ざん
➂計測機器の定期検査記録書の検査実施日が不適切
被害状況
検証の結果、安全性に直ちに影響はないことを確認したが、長期的継続使用の観点から、自主回収。
➂発覚した経緯
国土交通省東京航空局の立入検査と、社内調査の結果、発覚。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
報告書に書かれた真因
報告書P4~を引用すると、書いています。
- 事業拡大、業務量増加に応じた検査員の育成・増員がないまま、現状の人員で検査・実施し納期を優先
- 現場担当の安全意識・コンプライアンス意識がなかった
- 検査職場のOJT指導ルールが不明確だった
- 作業記録書の記述方法が不明確
- 同じ組織内に検査員と作業員が所属するため、両者の独立性が不十分
- 検査記録システムの入力が煩雑、システムの応答が遅かった
- 経営層まで情報共有されず、必要な対策が講じなかった
- 過去に受けた厳重注意(2001/10)および業務改善勧告(2004/7)が活かされていなかった
- 検査職場の検査員と中間管理職のコミュニケーション不足
- 経営層、管理職員が現場の実態を直視せず、過度の期待があった
皆さん、どうですか? 「なるほど!」ですか?
一方、QCプラネッツの感想は
つまり、何が不正に走らせたのか?
と不正に走らせた真犯人を特定したいところです。
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
もう一度、不正の真因内容をみましょう。適宜ツッコみをいれます。
- 事業拡大、業務量増加に応じた検査員の育成・増員がないまま、現状の人員で検査・実施し納期を優先⇒これが真因の1つでは?
- 現場担当の安全意識・コンプライアンス意識がなかった⇒ないはずがない
- 検査職場のOJT指導ルールが不明確だった⇒不明確と不正はつながらない
- 作業記録書の記述方法が不明確⇒不明確と不正はつながらない
- 同じ組織内に検査員と作業員が所属するため、両者の独立性が不十分⇒独立する/しないと不正は関係ない
- 検査記録システムの入力が煩雑、システムの応答が遅かった⇒不正と全く関係ない
- 経営層まで情報共有されず、必要な対策が講じなかった⇒これが真因の1つでは?
- 過去に受けた厳重注意(2001/10)および業務改善勧告(2004/7)が活かされていなかった⇒これが真因の1つでは?
- 検査職場の検査員と中間管理職のコミュニケーション不足⇒これが真因の1つでは?
- 経営層、管理職員が現場の実態を直視せず、過度の期待があった⇒これが真因の1つでは?
ツッコむをいれると、真因につながりそうなものと、無関係なものが混在しています。真因につながるものだけをまとめると、
- 検査員増員より納期を優先
- 組織全体がコミュニケーション疎
- 現場の投資より現場力へ過度な期待
なぜ、IHIに上の3つの圧力がかかったのでしょうか?
他社事例の真因分析を見てきたQCプラネッツは、
フレームワーク「QCD」のQ,C,Dの観点から想像すると、
と、ピンと来ます。! あなたは、ピンと来たでしょうか?
ピンとこない場合は、解説しますのでもう少し本記事を読んでください!
外部環境の観点
品質不正の報告書って、あまり外部環境分析が書いていません。
ここにさらっと書いています。組織の状況として書いていますが、外部環境分析として理解できます。
つまり、国外競合との厳しい競争にさらされている中、国内ビジネスで勝ち抜くには、
●安さ
●顧客の過度な要求・納期
が最優先される圧力がかかっていたとなります。
ここを理解しないと、航空機に悪影響を与える製品を作る悪い奴ら!と間違ったインプットをしてしまいます。そうじゃない!
航空機を作りたい技術者は、優秀で、プライドも高く、「安全は俺たちが守る!」という意思で仕事されているはずです。そんな頭脳集団が不正に走るわけですから、とんでもないおかしな圧力がかかっていると考えるのが正しいです!
組織の状況
さて、クイズです!
さっとイメージすると、
●「どうせ声を上げても変わらない」
●「管理職が職場に来ないし、話したことが無い」
●変な同調圧力
●諦め感
●煩雑で作業量が多い
●プレッシャーと常に戦っている
ですね。他社事例から持ってきた回答ですが、IHIでも当てはまりそうですよね!
報告書を引用します。
・高度に機械化された工場ではなく、作業員の能力に依存する割合が大きい工場
・機械化より、作業員の頑張り「現場力」を期待する経営層
・生産に対する対策が後手に回る結果になり、作業量増加
(報告書P11から引用)
・配置替えは「配属された環境で使い物にならなかった」というネガティブな印象
・同調圧力が生じやすく、上司のやり方に異を唱えた人が冷遇される
・これまでのやり方を踏襲しない人への冷ややかな視線
・「おかしい」と思っても言えない環境
・こういう環境で昇進して中間管理職になる
(報告書P35から引用)
どうでしょうか?
担当レベルの動き
この組織で働く担当はどんな感じでしょうか?
・「どうせ声を上げても変わらない」
・納期プレッシャーは半端ない
・人員不足
・技術面や安全面で問題がなければ、品質記録が多少事実と異なっていても構わない、それより顧客要求や納期が優先。
・業務量が増加すると十分なOJTができない
こんな環境でも転職しないのも日本らしいです。
IHIの品質不正の原因は「QCDバランス」で紐解くことができます! ⑤でまとめます!
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は、他社事例と同様に、おそらくQCDバランスの崩れではないかと推測します。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
上からの支配、モノを言わせない風土、工場内の偏った技術者気質も相まって、コミュニケーションも疎になり、課題が上に伝達せず、不正が続いてしまったとなります。他社事例と全く同じ真因です。
再発防止策は万全か?
報告書には再発防止策があります。P11を引用します。
- 対話会
- コミュニケーション強化
- 安全・品質強化する部門発足
- 検査資格の強化
- 職場ホットライン設置
- 品質基本行動指針
- 品質教育
一見、納得できそうですが、効果は無いでしょうね。 不正に走らせた圧力を除去していないからです。 工場への投資、競争力ある製品の見極めが第一じゃないでしょうか?そうじゃないと、再発します。過去に2回怒られての今回の不正発覚です。
⑥その後の結末
検証の結果、安全性に直ちに影響はないことを確認したが、長期的継続使用の観点から、自主回収。
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「IHIの品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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