スズキの品質不正を学ぶ
「スズキからなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
どの企業でも起こり得る!
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
経営課題として全社的な問題です。
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
報告書があります。
品質不正の内容
●160ページあり、各事業所・工場での不正の実態が随所に書いていますが、簡潔にまとめます。
●データの書換え(改ざん)
●検査の一部を間引き
●過去の測定実施結果をもとに、新たな測定データを複製
●社内規定に定められた条件を満たさない条件で試験
他社分析にも活かせるところまで、もう少し真因分析を本記事で掘り下げます。
被害状況
大きな被害はありません。
➂発覚した経緯
2017年9月29日、国土交通省「日産自動車の完成検査の不正事案を受けた確認の実施について」を発出したのち、スズキも社内調査した結果、発覚しました。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
もう一度、不正の真因内容をみましょう。適宜ツッコみをいれます。
⇒なぜ不合格の対処ができず、合格としたのか?
●データの書換え(改ざん)
⇒なぜデータを書き換えないといけなかったのか?
●検査の一部を間引き
⇒なぜ全部の検査ができなかったのか?
●過去の測定実施結果をもとに、新たな測定データを複製
⇒なぜ検査を省かないといけなかったのか?
●社内規定に定められた条件を満たさない条件で試験
⇒規定にさだめた条件で検査できなかったのか?
考え抜くポイントは
不正や悪のために仕事しているわけじゃありません。正しい事を成果としてあげたいはず。
それをできなくする圧力が何か?を見つける事が、説得力の高い真因分析につながります。
フレームワーク「QCD」のQ,C,Dの観点から想像すると、
と、ピンと来ましたか? おそらく来ないので、解説します!
組織の状況
報告書の真因分析(P138)を引用すると、
- 検査員の人員不足
- 検査工程上の時間的余裕の乏しさ
- 工場レイアウト上の余裕の乏しさ
- 検査設備の老朽化・不備
- 検査員の完成検査に関する法令・ルールに対する規範意識の著しい鈍麻
と、書いています。つまり、
●「時間内に完成検査工程を完了すること」が過度に重視
が原因です。つまり、無理なコスト抑制・投資抑制(C)と
無理な納期・老朽化にともなう煩雑で過大な業務量(D)
が検査部門にかかってしまったため、品質不正(Q)に走らざるを得ない状況になったと考えられます。
また、「品質不正に走る組織のあるある」ですが、
●完成検査実務の経験がない者が役職職に就く
●役職者の検査業務への知見の乏しさのため、役職者に適切に現場の要望を理解することが困難であるとの認識から、役職者に対して、当該問題点を報告し、改善を求めることを半ば諦めていた。
●役職者らによる完成検査の現場への積極的な状況把握の態度の欠如と、検査員らの役職者への心理的障壁が複合的に作用
●コミュニケーションの不全
担当レベルの動き
組織の状況を分析した結果からもわかるように、
●教育にかける時間も余裕もない
●検査の質は向上しない
組織内のコミュニケーションの不全から
経営層の観点
組織も個人も不正に走らざるを得ない圧力がかけた真因は何でしょうか?
無理な納期・老朽化にともなう煩雑で過大な業務量(D)
過度な原価抑制
報告書では、
●余力に乏しい人員計画
「少人」と呼ばれる人員を削減する取組みがあり、余剰となる工程の削減や作業の自動化等を通じた効率的な生産を目指すものであったが、実際には工場全体での人員削減という趣旨でも用いられてきました。
●工数を削減する取組(報告書P141)
完成検査を含めた全工程の生産コストを毎年 3%削減するという取組が求められていた。でも何で?
たしかに、「スズキは18年3月期まで8期連続で毎年200億円以上の原価低減をしてきたが、過度なコスト削減で現場が疲弊していたのは否めない。」(スズキの検査不正、一気に拡大 隠蔽が常態化(2019/4/13)
また、生産目標では、
経営層の悩み
一方、こんな経営層の悩みもあるようです。((スズキ、不正発覚で大量リコールでもCM自粛せず…89歳・鈴木会長の40年独裁経営の歪み(2019/5/27))から以下引用
「社内の風通しを良くし、しっかり議論できる体質に変えるのが私の役割だ」(鈴木社長)とするが、「鈴木修会長のワンマン体制が是正されない限り、絵に描いた餅に終わるだろう」(スズキの元役員)と冷ややかな見方が強い。
「引導を渡せるのは息子である俊宏社長だけなのだが、その胆力とリーダーシップに欠ける。これがスズキと鈴木家にとっての悲劇」
1978年の社長就任以来、40年以上にわたり同社トップに君臨し続ける鈴木会長に起因することは明らかだ。自らの分も含めた役員報酬額や役員人事は、「鉛筆をなめながら自分で決めている」(別のスズキの元役員)といわれる。もしそれが事実であれば、日産のカルロス・ゴーン前会長と姿がかぶる。
外部環境の観点
社内分析すると、
上にモノが言えない風土が重なり、品質不正せざるを得ない状況ができてしまった
と他社事例と同じ結果になりそうです。
国内・インドの市場規模、競合とのシェア争いのあたりでしょうか? 報告書等で明記していませんので、さらに考える必要があります。
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は分析できました。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
無理な納期・過大な業務量(D)
が検査部門にかかってしまったため、品質不正(Q)に走らざるを得ない状況になった
スズキのケースでも「QCDバランスの崩れ」が品質不正の真因であるとシンプルかつ明快にわかりましたね。
単なる、悪意の持った検査部門担当が悪いのではなく、厳しい経営の中、何とかやりくいしていたのが無理がたたってきたというのが真因です。
経営戦略を見直さなければ、品質不正は再発する恐れがあります。ここが、「品質不正は経営を考えろ!」という意味です。
⑥その後の結末
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「スズキの品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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