宇部興業の品質不正を学ぶ
「宇部興業からなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
経営課題として全社的な問題です。
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
報告書があります。
品質検査上の不適切行為の関する調査委員会の報告書について(2018/6/7)
品質不正の内容
●簡潔にまとめます。報告書P32を引用します。
●要求規格を満たさない場合、満たすように結果を改ざん
●顧客との仕様書に記載された試験方法と異なる方法を意図的に実施
●指定原産地の原料が不足する場合、異なる原産地の原料混入
被害状況
現状、大きな事故などの被害報告はありませんが、売上の1% (報告書 P1)の製品に不正がありました。
➂発覚した経緯
社内調査の結果、不適切行為が発覚しました。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
外部環境の観点
環境分析(3C,PEST)からわかること
宇部興業の品質不正の原因を理解するには、外部環境をしっかりおさえておくことが大事です。
そこで、
のP19から事業等のリスクが書いています。
- 主原料価格は国際的な需給バランスや原油等のエネルギー価格に影響を受ける
- 特定の地域や供給元の依存
- 顧客要求にタイムリーに応じられないことによる販売量減少
- セメントは国内の需要減少
- 国外企業(主に中国企業)の競争参入
- 炭素税導入、規制強化
- 売上国内63%,海外37%
これだけ読んでも、不正せざるを得ない厳しい事業環境であるとわかります。
つまり、
- 市場は縮小傾向で競合は国内外で厳しい競争
- 原料の価格変動のわりに、顧客からの厳しい要求
- 炭素税などのコスト増減要因がある
事業を勝ち続けるための、
●顧客要求の受け入れ
●コストカット
が要求されているのです。
組織の状況
収益要求のために、組織ではどうなっていたのかを報告書から引用しましょう。
●ポリエチレン事業は2003年以降は黒字化したもの、創業開始から38年間のうち27年間は経常損失を計上。(報告書 P37)つまり、コスト削減のため、人員削減が必要だった。
●新規製品追加、生産量の増加で、仕様書に記載された全部の試験が実施できない。1986年以降から不適切行為があった。
社内規格を満たしていれば、より緩やかな条件である仕様書の規格を検査しなくても大丈夫と判断。 実際、実害はない。
試験担当者の残業が頻繁で1名が休暇とるともう1人は休憩がとれないほど試験担当者の業務負担が過重。(報告書 P65)
試験業務の量・種類が増え、製品によっては納期が厳しくなった。業務負担を軽減するために試験を間引いた。(報告書 P65)
顧客との仕様書の規格を満たせないと出荷できず、顧客の信頼を失い、値下げ要求や損害賠償請求にもつながるおそれがある。だから、試験データを改ざんして出荷 (報告書 P78)
納入できる鉱山品の量が不足する時は、不足分を規格が満たさない他の鉱山品と混合して対応した。
要求する原料(石灰石)の質を維持するためには、採掘場所と採掘方法を変更せざるを得ない状況で大きな設備投資が必要であるが、それができなかった。
要するに、組織的な要因は、(報告書P124も引用すると)
- 過度なコストカットにより設備・人への投資が不足
- 設備・人の投資不足による業務過多で試験が不十分
- 製品の品質に実質的な問題がないという過信
- 不適切行為が社内のみで対応し「問題を表面化させない閉鎖的な風土」
必要なリソースの投資提言などは、上に提言しても、コストカット(C)と納期(D)の圧力がかかるので、提言が通らなくなり、「言うだけムダ」な諦めのムードが漂ったり、
最下流の検査部門にしわ寄せがきて、不正にはしってしまった。
自分の業務で精一杯だから、組織内のコミュニケーションが疎になる傾向があった。
人員不足だから、検査員の教育・育成が不十分で成長しない。
など、
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は分析できました。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
事業収益維持のために、コスト(C)、納期(D)へ過度な圧力がかかり続けた結果、品質不正に走ってしまった。
も強く実感できますね!
品質不正起こす企業を悪者扱いするのは、ナンセンスで、自分事としてとらえるべき!
⑥その後の結末
社内調査の結果から、安全性など「製品の品質に問題はないと考えている」と説明しています。
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「宇部興業の品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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