フォルクスワーゲンの品質不正を学ぶ
「フォルクスワーゲンからなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
経営課題として全社的な問題です。
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
●資料と出版本があります。
●資料
●フォルクスワーゲン社による排出ガス不正事例について
海外事例はなかなか資料が無い中、しっかりまとまった本です。必読です!
品質不正の内容
●簡潔にまとめます。
・NOxにおいて、路上走行時は検査・試験基準の最大35倍の量を排出。
・米環境保護局とカリフォルニア州大気資源局が報告し、ヒアリングの結果、不正が発覚(2015年)
・全世界の対象車:約1100万台
世界的有名企業がやってしまった…という印象を受けました。
世界的に有名で、優良企業がなぜ不正に走らないといけなかったのか? 疑問に思いませんか?
大事なのは、経営課題から見ていかないと、品質不正の真因にたどり着けません。
被害状況
事故などの被害報告はありませんでしたが、環境基準など違反しています。
➂発覚した経緯
米環境保護局とカリフォルニア州大気資源局が報告し、ヒアリングの結果、不正が発覚しました(2015年)
本にも書いていましたけど、
- 他社が追従できない程、クリーンな排出できる車、さすが!
- どうやって開発できたのか?他社が興味津々だった。
そりゃそうですよね。不正しているから、普通はできない結果が出ているんですよ
不正を疑った米国の検査側も、「まさか、フォルクスワーゲンが不正しているとは」思いませんでしたし、寝耳に水でした。
- 検査は米国の大学学生たちでフォルクスワーゲンに太刀打ちできない
- 検査結果がおかしいので、最初は自分たちの検査を疑ったくらい
- 何度も検査してもおかしいので、徐々に「まさか」と思いながら疑い始めた
有名企業の不正なんて、ありえないことがまさか、起こるとは思いませんよね。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
もう一度、不正の内容をみましょう。QCプラネッツの「ツッコミ」を入れると、その真因が見えそうです。
⇒不正の動機は何か?
・・・
ツッコミの記述と、フレームワーク「QCD」のQ,C,Dの観点から想像すると、
と、ピンと来ましたか? おそらく来ないので、情報を本から引用しましょう。
外部環境の観点
環境分析(3C,PEST)からわかること
フォルクスワーゲンはヨーロッパ市場で高いシェアを獲得しています。だからそれで問題ないじゃん! 現状維持でも十分儲かっているじゃん!と思いますよね。
一方、弱点もあります。
ヨーロッパでは、環境負荷が大きいディーゼカー市場規模が大きいが、市場規模が大きいアメリカでは環境規制が厳しくなっています。アメリカではハイブリッド車、電気自動車市場が広がりつつあります。
実は、フォルクスワーゲンは米国市場では苦戦しており、GM(米)やトヨタにシェアを奪われていました。
魅力ある米国市場を獲得するために、環境によい車を開発・販売が必須でした。
環境によい車とは当時2つあり、
- ハイブリッドやEV(⇒主流)
- クリーンディーゼル(⇒フォルクスワーゲンが選択)
でした。ディーゼルが強いフォルクスワーゲンは、クリーンディーゼル車で米国市場に入ろうと挑戦しました。
これだけだと、不正に走る理由はありませんよね。グリーンディーゼル車をじっくり開発すればいいから。
組織の状況
不正に走る理由を本や情報を入手する前に、考えてみましょう。
キツイ圧力がフォルクスワーゲン社内で起きていなかったかどうか?を想像しましょう。
フォルクスワーゲンは世界的に有名で強い企業です。市場参入を焦ら難くても技術をしっかり作りこんでからで参入しても勝てるはず。
しかも業績も悪くないし、赤字で収益改善のために無理なコストカットや無理な納期必達の圧力もかかりにくいはず。
となると、おそらく、
と想像できませんか?
QCプラネッツは、上の本を読む前に下の仮説を立てました。結果、ほぼ一致しました。
- 市場参入までに時間が無いが、技術的課題が解決できなかった。だから不正してごまかした
- 技術的課題が山積しているのに納期がきつく決まっていたかもしれない
- 世界的有名で他社より強い会社なのに、なんで納期がきつく決まっていたのか?
- 納期を無理に設定する帝王がいるんじゃないか?
- 帝王がいたとしたら、何で不正に厳しい米国市場に慌てて参入させようとしたか?
本の内容
フォルクスワーゲンには帝王がいました。っていうか帝王が君臨しちゃった。
帝王の君臨にはちゃんと理由があります。でも、いづれ組織が腐ってしまうんです。
- 1990年代当時、フォルクスワーゲンは従業員を増やしすぎて業績が悪化していた。
- そこにピエヒがトップに就任し、従業員を解雇せず、生産方式を日本式化しコスト削減に成功
- しかし、ピエヒは労働者を守る一方、周囲の経営陣を追い込む人だった。
- 業績が伸び、ピエヒの支持が増える一方、まわりに”イエスマン”しかいなくなった。
- ピエヒはエンジニアを限界まで追い詰めるようになり、「できないならクビ」と冷徹になった。
- ・ピエヒは製品の細部まで以上にこだわり部下に求めた。彼の言葉は法律で反抗や逃れる者はいない。
ここまで、読むと、「不正の理由がはっきりわかりますね。」
- 経営陣から生産現場への絶対的な圧力、指示、命令
- 現場の課題が上がってこない(来るわけがない)
- 「不可能は存在しない」となれば、どうにかするしかない
- 恐怖と非現実な期待が組み合わせると思考停止になり、法律まで犯してしまう
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は分析できました。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
トップの恐怖が不正の原因ですが、コスト(C)は全く影響しないケースです。むしろ、納期必達の(D)への異常な圧力が品質不正に走ってしまった結果につながります。
ピエヒの支配者を追放すればよいですが、
・労働者を守った彼への高い支持
・ドイツの独特な労働者と政治の関係性もあった
・彼の支配で周囲がイエスマンしかいない
・恐怖支配で、反抗できる体制がなかった
⇒ピエヒの命令で、今回は納期死守から品質不正に走ってしまいました。
本の内容を引用すると
・完全にあたらしいエンジンを設計、生産し排ガス問題を解決するには時間があまりにもなかった。
・「与えられた時間と予算内では低燃費と排ガス浄化と相反する2つの目標を両立させるのはムリだった」
・排ガス装置を付加すればよいが、手ごろ価格帯を狙うためコストアップできなかった。
・エンジンのソフトウェアを改造すればいいと冗談で言った言葉が本気に受け取り不正と思わずに不正に走ってしまった。
⑥その後の結末
米国へ制裁金を数兆円支払いました。
現在は、クリーンディーゼル車のシャアは非常に少なく、ハイブリッドやEV車が主流になっています。
独裁化すると「ろくなことがない」ってことです。
品質不正した設計・開発・製造・検査のエンジニアだけ見ても、真因はつかめません。
品質不正から、これだけ経営課題を解くヒントが読み取れます!
●フォルクスワーゲンは不正再発防止のために、どんな対応策をとるべきでしょうか?それを次に解説します。
⑦とるべき対応策
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「フォルクスワーゲンの品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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