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信頼性における抜取検査はポアソン分布を使う理由がわかる

信頼性工学

「信頼性に関して故障率と指数分布で定義した製品を抜取検査する場合、なぜポアソン分布で検査してよいのかがわからない」、と困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

信頼性における抜取検査はポアソン分布を使う理由がわかる
  • ①信頼性における抜取検査
  • ➁指数分布からポアソン分布への導出を解説

①信頼性における抜取検査

品質管理と信頼性の抜取検査の違い

信頼性試験は、故障する・しないの試験ですが、一部のサンプルを抜き取って、ロットの合否判定したい場合があります。

ただし、品質管理における抜取検査とは次の3点が異なります。

信頼性試験 品質管理
変数 故障率λ、MTBF 不良率p
時間 故障するまで待つと時間がかかる。
打切ったりする。
検査で良否が判定
確率分布 指数分布 正規分布

品質管理の抜取検査と、少し違うところもありますが、信頼性について抜取検査することも可能です。

信頼性の抜取検査のOC曲線を考えてみましょう。

品質管理と信頼性のOC曲線の違い

考え方は同じ。呼び名が変わるだけ。

下図で比較しましょう。

22a

呼び名が変わる!

L(ロット合格率) 信頼性試験 品質管理
1-α ARL
(Acceptable reliability level)
合格信頼性水準
AQL
(Acceptable quality level)
合格品質水準
β LTFR
(Lot tolerance failure rate)
ロット許容故障率
LTPD
(Lot tolerance percent defective)
ロット許容不良率

考え方は同じ。呼び名が変わるだけ。

➁指数分布からポアソン分布への導出を解説

何でポアソン分布型で抜取検査するの?

教科書では、信頼性の場合は元々指数分布で定義されることが多く、抜取検査ではポアソン分布型を使う当たり前のように書いています。

何で?と疑問ですよね!

簡単に導出を解説します。

指数分布からポアソン分布への導出を解説

抜取検査は、二項分布をよく使いますよね。ここからスタートします。

●二項分布は
\({}_n C_k p^k (1-p)^{n-k}\)
ですね。

●次に\(p\)は不良率なので、ここに信頼性における指数分布式を代入します。
仮に、指数分布関数を
\(F(t)=1-e^{-λt}\)
とします。

●二項分布は
\({}_n C_k p^k (1-p)^{n-k}\)
=\({}_n C_k F(t)^k (1-F(t))^{n-k}\)
=\({}_n C_k (1-e^{-λt})^k (e^{-λt})^{n-k}\)

ですね。

●次に指数関数型をテーラー展開しましょう。
\(e^t\)=1+\(t\)+\(\frac{t^2}{2!}\)+…
ですね。これの1次式まで使いましょう。

\(e^{-λt}\)=1-\(λt\)
\(1- e^{-λt}\)=1-(1-\(λt\))=\(λt\)
から、二項分布の式に代入すると、

●二項分布は
=\({}_n C_k (1-e^{-λt})^k (e^{-λt})^{n-k}\)
=\(\frac{n!}{k!(n-k)!} (λt)^k (e^{-λt})^{n-k}\)
と変形させます。

ここで、変数\(a\)=\(λt(n-k)\)とおいて、整理すると
\(\frac{n!}{k!(n-k)!} (λt)^k (e^{-λt})^{n-r}\)
=\(\frac{n!}{k!(n-k)!} (\frac{a}{n-k})^k (e^{-a}\)
=\(\frac{1}{k!} a^k e^{-a} \frac{n!}{(n-k)!} (\frac{1}{n-k})^k\)
と変形できます。

よく見ると、
=\(\frac{1}{k!} a^k e^{-a} \)はポアソン分布型で、
\(\frac{n!}{(n-k)!} (\frac{1}{n-k})^k\)は変な定数
となりますね。だいぶポアソン分布型になってきました。

さらに、
\(\frac{n!}{(n-k)!} (\frac{1}{n-k})^k\)を展開すると、
\(\frac{n!}{(n-k)!} (\frac{1}{n-k})^k\)
=\(\frac{n(n-1)…(n-k+1)}{(n-k)(n-k)…(n-k)}\)×\(\frac{(n-k)(n-k-1)…1}{(n-k)(n-k-1)…1}\)
=\(\frac{n(n-1)…(n-k+1)}{(n-k)(n-k)…(n-k)}\)
⇒1 (nが十分大きくなると)

まとめると、

●品質管理の抜取検査でよく使う二項分布
\({}_n C_k p^k (1-p)^{n-k}\)
の不良率\(p\)に不信頼度関数\(F(t)\)
を代入して、指数関数をテーラー展開して
整理すると
\({}_n C_k p^k (1-p)^{n-k}\)⇒\(\frac{1}{k!} a^k e^{-a}\)
というポアソン分布型に変形できる。

これが、信頼性を抜取検査するときに、ポアソン分布型を使ってもよい理由となります。できましたね!

信頼性の抜取検査を他の記事でも解説していきますので、ご確認ください。

まとめ

「信頼性における抜取検査はポアソン分布を使う理由がわかる」を解説しました。

  • ①信頼性における抜取検査
  • ➁指数分布からポアソン分布への導出を解説


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