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(速報)日本製鋼所の品質不正を学ぶ

品質不正

「日本製鋼所からなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

日本製鋼所の品質不正を学ぶ
2022/11/14に品質検査の不適切行為について調査報告書が出ましたので、解説します!

どの企業でも日本製鋼所のような危機が襲ってきます。
何社も品質不正を分析すると、日本製鋼所のケースも同じ真因であるとわかります。
  • ①品質マインド
  • ➁品質不正の内容・被害
  • ➂発覚した経緯
  • ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
  • ➄品質不正に至った真因
  • ⑥その後の結末
  • ⑦とるべき対応策
品質不正事例を解説しますが、上の①~⑦は共通の章立てで解説します。他社との比較がしやすくなり、品質不正してそうなヤバい空気を見抜くことができます!
品質不正は、技術・製造・検査・品質部門だけの問題ではありません。
経営課題として全社的な問題です。
品質不正を解くとは、
経営×品質の応用問題です。

品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。

①品質マインド

品質不正を学ぶ最も大切なマインドを最初に解説します。

●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。

【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】
品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。

●大事な3つのマインドを再掲します。

  1. 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
  2. 対岸の火事ではない!
  3. 「失敗は成功のもと」につなげよう!

●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。

➁品質不正の内容・被害

情報元

報告書があります。

品質不正の内容

●簡潔にまとめます。報告書P25を引用します。一部を上げます。

●残留応力検査の結果の改ざん/ねつ造/虚偽記載
●浸透探傷検査における未報告
●寸法側的に伴うねつ造/不正検査
●指定原産地の原料が不足する場合、異なる原産地の原料混入

報告書はわかりやすく、5つの不適切行為でまとめています。報告書P23のとおり、
①改ざん→検査の結果を書き換える
➁ねつ造→実施しなかった検査を検査したかのように見せる
➂不正検査→顧客仕様で定められたものと異なる方法で検査したが、顧客仕様どおり検査したと見せる
➃虚偽記載→実際に実施した条件と異なる条件で検査したかのように記載する
➄未報告→顧客に報告しなければならない内容を報告しなかった

被害状況

現時点では不正に起因した製品の品質・性能上の問題は確認されていません。

➂発覚した経緯

22年2月下旬に内部通報があり、社内で抜き打ち調査を実施して確認しました。

➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報

なぜ、日本製鋼所は不正に走ったのでしょうか?

企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。

そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!

  1. 外部環境の観点
  2. 組織の状況
  3. 担当レベルの動き

外部環境の観点

環境分析(3C,PEST)からわかること

日本製鋼所の品質不正の原因を理解するには、外部環境をしっかりおさえておくことが大事です。

コスト(C)と納期(D)の圧力がかかる原因が厳しい事業になるから

報告書から引用すると、以下の3点がわかります。

  1. 受注急増に対応できるリソースが無かった
  2. 合理的な説明をしても顧客に受け入れられないケースが多い
  3. 原子力製品では、東日本大震災以後、品質要求の厳格化により業務負荷増加

受注急増に対応できるリソースが無かった

報告書から引用すると、以下が分かります。

  1. 1990年代後半は製鉄業界の経営は厳しかった
  2. その中、1998年頃から北米向けの製品受注が急増した。
  3. さらに、2002年頃から中国の火力発電ブームにより中国向け製品も急増した
  4. 受注が急増するが、担当者や検査設備は従前のままだった

つまり、

  1. 受注が急増する前は、厳しい経営のためコストカット徹底してきた
  2. 受注が急増し、収益は改善できた
  3. でも、急増に対応できる十分なリソースが社内になかった

合理的な説明をしても顧客に受け入れられないケースが多い

報告書によると、電力製品では、「顧客要求仕様が高い。合理的な説明をしても顧客に受け入れられないケースが多かった」となっています。

他社とのコスト競争や、顧客が国などの強い政治力がある相手だと、なかなか交渉事ができない事情があると理解できますね。

原子力製品では、東日本大震災以後、品質要求の厳格化により業務負荷増加

大震災による、原発事故が衝撃的だったため、震災後の原子力製品の事業環境が大きく変化 品質要求の厳格化 業務負荷が高まりました。これもよく、理解できますね!

組織の状況と担当レベルの動き

事業環境が
・急激な受注があるが
・顧客との交渉が優利に進められない
・原子力製品など、さらに品質要求が高まっていくが、
・社内のリソース(人、設備)は従前と変わらない
となると、組織はどうなりますか?

組織に緊張が走るようになり、品質不正の他社事例にもあるように、
●ある部門が力を持ち始める
●部門間のコミュニケーションや牽制が効かなくなる

となります。

報告書を引用すると、

①品質保証部門の対応能力を超え、牽制機能が発揮しなくなった。
➁製品への過信と顧客要求・対話のプレッシャー
高度な製品を製造してきた自負がある一方で、品質・納期を確保する姿勢が強い。品質トラブルが生じた場合、顧客との十分なコミュニケーションをせず、個人や組織レベルで正当化しがち。
➂紙ベースや手作業を中心とした検査業務プロセスと慢性的な人員不足
 設備投資がままならず、紙ベース、手作業が中心の業務で、業務の多さや管理の煩雑さが業務負荷増加し、
人員リソース逼迫(ひっぱく)を招き、検査の省略化をしてしまう。

なるほど、

事業が厳しい組織が品質不正に走る原因と全く同じですね。

➄品質不正に至った真因

QCDバランスはどう崩れたか?

不正が起きた原因は分析できました。QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。

事業収益維持のために、コスト(C)、納期(D)へ過度な圧力がかかり続けた結果、品質不正に走ってしまった。

ここまで分析すると、日本製鋼所が不正に走らざるを得ない理由がよくわかりますね。

つまり、

  1. 2000年頃の北米、中国向けの受注が急増したが、コストカット(C)のため人員・設備への投資が間に合わず、業務逼迫のため品質(Q)不正に走らざるを得なくなった。
  2. 顧客からの高い要求による納期必達(D)のプレッシャーがある一方、自社製品への過信もあり、顧客との十分なコミュニケーションをせず、個人や組織レベルで正当化しがち

となりますね。上の2つを読むと、

どの企業でも品質不正が起こりうる!!
も強く実感できますね!

品質不正起こす企業を悪者扱いするのは、ナンセンスで、自分事としてとらえるべき!

⑥その後の結末

社内調査の結果から、安全性など「製品の品質に問題はないと考えている」と説明しています。

⑦とるべき対応策

再発防止策も報告書にありますが、QCプラネッツは以下を対応しないと、品質不正は再発すると考えています。

  1. コストカットの圧力を除去
  2. 人員・技術者増員、設備投資などの投資強化
  3. 納期の交渉力(相手が強いなら大きな力を借りるなど)

これは、

職場の各担当では対応できません。
経営陣の強い覚悟の上の改革をする必要があります。

これは、どの企業でも言えることです。

●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。

品質不正を犯した所だけ、是正・修正しても効果はない。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。

●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!

【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる
品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。

QCプラネッツは、品質不正から立ち直る仲間を応援します!
がんばりましょう!

まとめ

「日本製鋼所の品質不正を学ぶ」を解説しました。

  • ①品質マインド
  • ➁品質不正の内容・被害
  • ➂発覚した経緯
  • ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
  • ➄品質不正に至った真因
  • ⑥その後の結末
  • ⑦とるべき対応策


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