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品質工学、変動の期待値が導出できる

ロバストパラメータ設計

「品質工学_変動の期待値が導出できない」などと困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

品質工学、変動の期待値が導出できる

おさえておきたいポイント

  • ①静特性の変動の期待値を導出
  • ➁動特性の変動の期待値を導出
●静特性
データの構造式: \(y_i\)=\(\bar{y}\)+\((y_i-\bar{y})\)の場合、
・全変動E[\(S\)]=\(n(m^2 +σ^2)\)
・平均変動E[\(S_m\)]=\(nm^2 +σ^2\)
・誤差変動E[\(S_e\)]=\((n-1)σ^2\)
●動特性
データの構造式: \(y_i\)=\(\hat{y_i}\)+\((y_i-\hat{y_i})\)の場合、
・比例変動E[\(S_β\)]=\(rβ^2 +σ^2\)
・誤差変動E[\(S_e\)]=\((n-1)σ^2\)
ただし、\(r\)=\(\sum_{i=1}^{n} x_i^2\)=\(x_1^2+x_2^2+…+x_n^2\)
本記事でしっかり導出!

①静特性の変動の期待値を導出

データの構造式を定義

データの構造式を次のように定義します。静特性で最もシンプルなパターンです。
\(y_i\)=\(\bar{y}\)+\((y_i-\bar{y})\)

全変動\(S\)の期待値を導出

ここで、データ値\(y_i\)の期待値と分散を定義します。
●E[\(y_i\)]=\(m\)
●V[\(y_i\)]=\(σ^2\)

これは、単にデータの平均が\(m\)で分散\(σ^2\)にばらついているという意味ですね。

E[\(y_i^2\)]を導出

厄介な式ですが、分散の公式
V(X)=E(X2)-E(X)2
から求めます。

よって、
\(σ^2\)= E(\(y_i^2\))-\(m^2\)
E(\(y_i^2\))=\(σ^2+m^2\)
となります。後で使います。

次に、全変動\(S\)は定義式から
\(S\)=\(\sum_{i=1}^{n} y_i^2\)より
E(\(S\))=E(\(\sum_{i=1}^{n} y_i^2\))
=\(\sum_{i=1}^{n} (σ^2+m^2)\)
=\(n(σ^2+m^2)\)
と導出できます。よって、
E(\(S\))=\(n(σ^2+m^2)\)
となります。

平均変動\(S_m\)の期待値を導出

E(\((\sum_{i=1}^{n} y_i)^2)\)
を導出

分散の公式から
V(\(\sum_{i=1}^{n}y_i\))=E(\((\sum_{i=1}^{n} y_i)^2\))-[E(\(\sum_{i=1}^{n}y_i\))]2
となり、
V(\(\sum_{i=1}^{n}y_i\))=\(nσ^2\)
[E(\(\sum_{i=1}^{n}y_i\))]2=\((nm)^2\)
が成り立つので、

E((\(\sum_{i=1}^{n} y_i)^2\))=\(nσ^2\)+\((nm)^2\)
となります。これを後で使います。

次に、平均変動\(S_m\)は定義式から
\( S_m \)=\(\sum_{i=1}^{n} (\frac{y_i}{n})^2\)より
E(\(S_m \))=E(\(\sum_{i=1}^{n} (\frac{y_i}{n})^2\))
=E(\(n・(\frac{(\sum_{i=1}^{n} y_i)^2}{n^2})\))
=E(\(\frac{(\sum_{i=1}^{n} y_i)^2}{n}\))
となり、

E(\((\sum_{i=1}^{n} y_i)^2\))=\(nσ^2\)+\((nm)^2\)を代入すると
\( S_m \)=\(\frac{ nσ^2+(nm)^2}{n}\)
=\(nm^2+σ^2\)

誤差変動\(S_e\)の期待値を導出

単純に
\(S_e\)=\(S\)-\(S_m\)から
E(\(S_e\))=E(\(S\))-E(\(S_m\))
=\(n(σ^2+m^2)\)-(\(nm^2+σ^2\))
=\((n-1)σ^2\)
となります。確かに、自由度が\(n-1\)なので、
E(\(V_e\))=\((n-1)/(n-1)σ^2\)=\(σ^2\)
ですね。

以上をまとめると、

●静特性
データの構造式: \(y_i\)=\(\bar{y}\)+\((y_i-\bar{y})\)の場合、
・全変動E[\(S\)]=\(n(m^2 +σ^2)\)
・平均変動E[\(S_m\)]=\(nm^2 +σ^2\)
・誤差変動E[\(S_e\)]=\((n-1)σ^2\)

が、導出できましたね。

次に動特性についても導出していきます。

➁動特性の変動の期待値を導出

 ここから

データの構造式を定義

データの構造式を次のように定義します。静特性で最もシンプルなパターンです。
\(y_i\)=\(\hat{y_i}\)+\((y_i-\hat{y_i})\)
ここで、\(\hat{y_i}\)=\(βx_i\)

なお、傾き\(β\)は
\(β\)=\(\frac{\sum_{i=1}^{n}x_i y_i }{\sum_{i=1}^{n}x_i^2 }\)で回帰直線の傾きと同じでしたね。関連記事で解説しています。

品質工学の動特性は回帰分析と同じ(その1)
品質工学の動特性は、回帰分析と同じです。使う文字やデータの構造式の式が違いますが、同じです。データの構造式、2乗和の分解、分散分析と丁寧に導出すれば、動特性と回帰分析が同じであることがわかります。その1を解説します。

品質工学の動特性は回帰分析と同じ(その2)
品質工学の動特性は、回帰分析と同じです。使う文字やデータの構造式の式が違いますが、同じです。データの構造式、2乗和の分解、分散分析と丁寧に導出すれば、動特性と回帰分析が同じであることがわかります。その2を解説します。

比例項の分散\(V(β)\)を導出

ここで、\(x_i\)は定数、\(y_i\)を変数と見ると、
\(V(β)\)=\(V(\frac{\sum_{i=1}^{n}x_i y_i }{\sum_{i=1}^{n}x_i^2 })\)
=\(V(\frac{x_1 y_1+x_2 y_2+…+x_n y_n }{x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2 })\)
=\(V(\frac{x_1}{x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2 } y_1+\frac{x_2}{x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2 } y_2+…+\frac{x_n}{x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2 } y_n+)\)
=\(\frac{x_1^2}{(x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2)^2 }σ^2\)+\(\frac{x_2^2}{(x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2)^2 }σ^2\)+…+\(\frac{x_n^2}{(x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2)^2 }σ^2\)
=\(\frac{ x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2}{(x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2)^2 }σ^2\)
=\(\frac{ 1}{x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2}σ^2\)
=\(\frac{σ^2}{r}\)
ここで、\(r\)=\( x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2\)とします。

まとめると、
\(V(β)\)= \(\frac{σ^2}{r}\)
\(r\)=\( x_1^2 + x_2^2+…+x_n^2\)

次に、E(\(β^2\))を分散の公式から計算します。
\(V(β)\)= E(\(β^2\))- E(\(β\))2
から
●E(\(β^2\))=\(\frac{σ^2}{r}\)+\(β^2\)

比例変動\(S_β\)の期待値を導出

次に、比例変動\(S_β\)を計算すると、
\(S_β\)=\(\sum_{i=1}^{n}\hat{y_i^2}\)
=\(\sum_{i=1}^{n} (βx_i)^2\)
=\(β^2 (x_1^2+x_2^2+…+x_n^2)\)
=\(β^2 r\)

まとめると、
●\(S_β\)=\(β^2 r\)
E(\(β^2\))=\(\frac{σ^2}{r}\)+\(β^2\)

から

比例変動\(S_β\)の期待値は
E(\(S_β\))=E(\(β^2 r\))
= E(\((\frac{σ^2}{r}+β^2)r\))
=\((\frac{σ^2}{r}+β^2)r\)
=\(σ^2+rβ^2\)
となります。

誤差変動\(S_e\)の期待値を導出

これは単純に、自由度\(n-1\)に分散\(V_e=σ^2\)を掛け算すればいいので、
E(\(S_e\))=\((n-1)σ^2\)
となります。

以上まとめると、

●動特性
データの構造式: \(y_i\)=\(\hat{y_i}\)+\((y_i-\hat{y_i})\)の場合、
・比例変動E[\(S_β\)]=\(rβ^2 +σ^2\)
・誤差変動E[\(S_e\)]=\((n-1)σ^2\)
ただし、\(r\)=\(\sum_{i=1}^{n} x_i^2\)=\(x_1^2+x_2^2+…+x_n^2\)

が、導出できましたね。

まとめ

「品質工学、変動の期待値が導出できる」を解説しました。

  • ①静特性の変動の期待値を導出
  • ➁動特性の変動の期待値を導出


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