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繰返し数が異なる場合は一元配置実験だけである理由がわかる

実験計画法

「繰返し数が異なる場合は一元配置実験だけ学ぶが、なぜ二元配置実験には例がないのか?」、「繰返し数が異なる二元配置実験は何が問題か?」を答えられますか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

繰返し数が異なる場合は一元配置実験だけである理由がわかる【初心者必見】

本記事の答え

繰返し数が異なる二元配置実験では、主効果、残差の平方和の総和と総平方和が一致しないから

二元配置実験(交互作用無し)の平方和の分解

  • ①繰返し数が異なる場合(一元配置実験と二元配置実験)
  • ②一元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱ってもよい理由
  • ③二元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱うのはダメな理由

記事の信頼性

記事を書いている私は、QC検定®1級合格した後、さらに実験計画法に磨きをかけています。とはいえ、QC検定®1級合格前の1.5年前までは、実験計画法すら知りませんでした。実験計画法を初めて勉強して3ヶ月後にQC検定®2級を合格しました。実験計画法はまったく理解できていませんでしたが、計算方法だけ暗記して点数を稼ぐレベルでした。

本記事は、実験計画法を学び始めるときに、なぜ?と不思議に思う内容をわかりやすく解説します。すぐ読めます!

データの分解と平方和の分解については、関連記事をご覧下さい。
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●商標使用について、
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①繰返し数が異なる場合(一元配置実験と二元配置実験)

繰返し数が異なる一元配置実験

繰返し数同じの場合

簡単のため2×2=4つのデータで考えます。

データとデータの構造式に沿ってデータを分解した表を用意します。

<p関連記事に詳細な計算過程を解説しています。

xij
A1 12 24
A2 36 60
=
μ 33 33
33 33
+
αi -15 -15
15 15
+
εij -6 6
-12 12

続いて、各データを2乗にします。平方和の分解が出来ることを確認します。

xij
A1 144 576 5616
A2 1296 3600
=
μ 1089 1089 4356
1089 1089
+
αi 225 225 900
225 225
+
εij 36 36 360
144 144

繰返し数が異なる場合

A2の最初の値x21つまり36を削除します。データを分解してみましょう。

xij
A1 12 24
A2 60
=
μ 32 32
32 32
+
αi -14 -14
28
+
εij -6 6
0

続いて、各データを2乗にします。平方和の分解が出来ることを確認します。

xij
A1 144 576 4320
A2 3600
=
μ 1024 1024 3072
1024
+
αi 196 196 1176
784
+
εij 36 36 72
0

3072+1176+72=4320と平方和の合計が一致します。

繰返し数が異なる一元配置実験では、主効果・残差の平方和の和と総平方和が等しい

なので、繰返し数が異なる一元配置実験がよくテストや試験に出ます。

繰返し数が異なる二元配置実験

繰返し数同じの場合

簡単のため2×2=4つのデータで考えます。

データとデータの構造式に沿ってデータを分解した表を用意します。

<p関連記事と、関連記事に詳細な計算過程を解説しています。

xij B1 B2
A1 12 24
A2 36 60
=
μ 33 33
33 33
+
αi -15 -15
15 15
+
βj -9 9
-9 9
+
εij 3 -3
-3 3

続いて、各データを2乗にします。平方和の分解が出来ることを確認します。

xij B1 B2
A1 144 576
A2 1296 3600 5616
μ 1089 1089 4356
1089 1089
+
αi 225 225 900
225 225
+
βj 81 81 324
81 81
+
εij 9 9 36
9 9

繰返し数が異なる場合

AB21の最初の値x21つまり36を削除します。データを分解してみましょう。

xij B1 B2
A1 12 24
A2 60
=
μ 32 32
32
+
αi -14 -14
28
+
βj -20 10
10
+
εij 14 -4
-10

続いて、各データを2乗にします。平方和の分解が出来ることを確認します。

xij B1 B2
A1 144 576
A2 3600 4320
μ 1024 1024 3072
1024
+
αi 196 196 1176
784
+
βj 400 100 600
100
+
εij 196 16 312
100

平方和を合計します。
(左辺)=4320
(右辺)=3072+1176+600+312=5160≠4320
と一致しません。つまり、
ST≠SA+ SB+ Se
となり、平方和が分解できません。これでは分散分析に進めることができません。
ST=4320-3072=1248
SA=1176
SB=600
Se=312
SA+SB+Se=2088≠ST

繰返し数が異なる二元配置実験では、主効果・残差の平方和の和と総平方和が異なる

なので、繰返し数が異なる二元配置実験が出てきません。

②一元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱ってもよい理由

繰返し数が異なる一元配置実験では、主効果・残差の平方和の和と総平方和が同じであることを一般式で確かめる

2×2の最小データ数ですが、文字式で確認しましょう。
繰返し数が異なる場合は、x21を無視した3データの場合とします。

xij
A1 x11 x12
A2 x21 x22

次に、μ、α、εをx11,x12,x21,x22を使って表現します。
結構複雑なので、係数表にまとめます。

繰返し数同じ 繰返し数異なる
x11 x12 x21 x22 x11 x12 x22
μ 1/4 1/4 1/4 1/4 1/3 1/3 1/3
α1 1/4 1/4 -1/4 -1/4 1/6 1/6 -1/3
α2 -1/4 -1/4 1/2 1/2 -1/3 -1/3 2/3
ε11 1/2 -1/2 0 0 1/2 -1/2 0
ε12 -1/2 1/2 0 0 -1/2 1/2 0
ε21 0 0 1/2 -1/2
ε22 0 0 -1/2 1/2 0 0 0

平方和の総和を式で書きます。

繰返し数が同じの場合

(左辺)=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{21}^2+ x_{22}^2\)
(右辺)=(\(μ^2+α_1^2+ε_{11}^2\))+(\(μ^2+α_1^2+ε_{12}^2\))
+(\(μ^2+α_2^2+ε_{21}^2\))+(\(μ^2+α_2^2+ε_{22}^2\))
=(上の係数表を使って計算すると)
=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{21}^2+ x_{22}^2\)
=(左辺)
となり、一致するので、平方和の総和を主効果、残差の平方和に分解することができます。

繰返し数が異なる場合

(左辺)=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{22}^2\)
(右辺)=(\(μ^2+α_1^2+ε_{11}^2\))+(\(μ^2+α_1^2+ε_{12}^2\))
+(\(μ^2+α_2^2+ε_{22}^2\))
=(上の係数表を使って計算すると)
=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{22}^2\)
=(左辺)
となり、一致するので、平方和の総和を主効果、残差の平方和に分解することができます。

③二元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱うのはダメな理由

繰返し数が異なる二元配置実験では、主効果・残差の平方和の和と総平方和が異なることを一般式で確かめる

2×2の最小データ数ですが、文字式で確認しましょう。
繰返し数が異なる場合は、x21を無視した3データの場合とします。

xij B1 B2
A1 x11 x12
A2 x21 x22

次に、μ、α、β、εをx11,x12,x21,x22を使って表現します。
結構複雑なので、係数表にまとめます。

繰返し数同じ 繰返し数異なる
x11 x12 x21 x22 x11 x12 x22
μ 1/4 1/4 1/4 1/4 1/3 1/3 1/3
α1 1/4 1/4 -1/4 -1/4 1/6 1/6 -1/3
α2 -1/4 -1/4 0.25 0.25 -1/3 -1/3 2/3
β1 1/4 -1/4 1/4 -1/4 2/3 -1/3 -1/3
β2 -1/4 1/4 -1/4 1/4 -1/3 1/6 1/6
ε11 1/4 -1/4 -1/4 1/4 -1/6 -1/6 1/3
ε12 -1/4 1/4 1/4 -1/4 -1/6 1/3 -1/6
ε21 -1/4 1/4 1/4 -1/4
ε22 1/4 -1/4 -1/4 1/4 1/3 -1/6 -1/6

平方和の総和を式で書きます。

繰返し数が同じの場合

(左辺)=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{21}^2+ x_{22}^2\)
(右辺)=(\(μ^2+α_1^2+β_1^2+ε_{11}^2\))+(\(μ^2+α_1^2+β_2^2+ε_{12}^2\))
+(\(μ^2+α_2^2+β_1^2+ε_{21}^2\))+(\(μ^2+α_2^2+β_2^2+ε_{22}^2\))
=(上の係数表を使って計算すると)
=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{21}^2+ x_{22}^2\)
=(左辺)
となり、一致するので、平方和の総和を主効果、残差の平方和に分解することができます。

繰返し数が異なる場合

(左辺)=\(x_{11}^2+ x_{12}^2+ x_{22}^2\)
(右辺)=(\(μ^2+α_1^2+β_1^2+ε_{11}^2\))+(\(μ^2+α_1^2+β_2^2+ε_{12}^2\))
+(\(μ^2+α_2^2+β_2^2+ε_{22}^2\))
=(上の係数表を使って計算すると)
=\(\frac{4}{3}x_{11}^2+\frac{5}{6} x_{12}^2+\frac{4}{3} x_{22}^2\)
+\(\frac{1}{6}x_{11} x_{12}-\frac{5}{6} x_{11} x_{22}+\frac{1}{6} x_{12} x_{22}\)
≠(左辺)
となり、一致しません。平方和の総和を主効果、残差の平方和に分解することができません。

繰返し数が異なる場合は、二元以上の配置実験では、主効果・残差の平方和の和と総平方和が異なるため、扱うことができません。
問:繰返し数同じ、異なる場合について、2×2の4つのデータを使って
総平方和が主効果・残差の平方和の和に
(1)一元配置実験では一致するが、
(2)二元配置実験では一致しない
ことを、x11,x12,x21,x22の文字式を使って導出せよ。
(本記事では、途中計算を省きましたが、実際に解いてみてください。
解説集にはあります。

まとめ

返し数が異なる場合は一元配置実験だけあり、二元配置実験には無い理由を詳細に解説しました。

  • ①繰返し数が異なる場合(一元配置実験と二元配置実験)
  • ②一元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱ってもよい理由
  • ③二元配置実験は繰返し数が異なる場合を扱うのはダメな理由


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