小林化工から品質不正を学ぶ
「小林化工からなぜ、品質不正で学ぶケースなのか?」と疑問に思いませんか?
こういう疑問に答えます。
本記事のテーマ
どの企業でも起こり得る!
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
問2:なぜ、不正してまでも企業急成長を最優先したかったのか?
問1は、QCプラネッツの他社事例を読めば原因は同じなので、すぐわかります!
問1の答えが分かると、問2の疑問がわくはずです。
なぜ圧力がかかったのか?を考えましょう
品質不正のテーマで21社目のブログです。関連記事を見て、上の問いである「圧力」が何かを考えてください。
1.雪印集団食中毒事
2.不二家
3.赤福
4.船場吉兆
5.東洋ゴム
6.日立化成
7.富久娘酒造
8.フォルクスワーゲン
9.三菱自動車
10.パロマ
11.スバル
12.日産自動車
13.東レ
14.三菱マテリアル子会社
15.東洋紡
16.京セラ
17.トーカン(三菱電機子会社)
18.KYB
19.ジャムコ
20.丸善石油化学
経営×品質の応用問題です。
品質不正をした相手への批判ではなく、表に出ない真因を考え抜く力を身に着けるためにブログ記事として解説していきます。
①品質マインド
●関連記事で解説しています。まず、こちらを読んでください。
【必読】品質不正を考える正しいマインドがわかる【褒めて応援すべし!】 品質不正の報道が出たら、その相手を叩こうとしていませんか?本記事では品質不正に対する正しいマインドを解説します。厳しい競争にさらされつつ、挑戦する社会では、失敗もつきものですよ。失敗をある程度許容して、反省して成功につなげやすいマインドが 必須です。 |
●大事な3つのマインドを再掲します。
- 品質不正を打ち明けた企業・組織を褒めよう!
- 対岸の火事ではない!
- 「失敗は成功のもと」につなげよう!
●悪い膿を出して、再生・復活する企業・組織を応援しましょう。もちろん、不正した相手の誠意が前提です。
➁品質不正の内容・被害
情報元
報告書と論文があります。
●近年の医薬品製造所における不正事案と再発防止策(厚生労働省)
品質不正の内容
●論文から引用します。
②製造記録の捏造,改ざん
③品質試験結果の捏造等が製造所において常態化
医薬品をいい加減に製造するとヤバい事は素人でもわかる でも何でこうなったんでしょうか?
被害状況
webの新聞記事を引用すると
意識障害などの健康被害は150件を超え、飲んだ70代女性と80代男性が死亡した。服用者が車を運転中に意識を失う交通事故も20件以上発生。
●「2人が死亡」ジェネリック薬の信頼を失墜させた睡眠剤混入の大罪
➂発覚した経緯
健康被害や事故から発覚。
➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
実は他社事例と全く同じミスをしている
関連記事19.ジャムコを先に読むと、「不正した真因がすぐイメージできます。」
ジャムコは航空機部品での不正
小林化工はジェネリック医薬品での不正
ですが、不正に走ったメカニズムは全く同じです。
報告書から真因を紐解こう!
企業の内外分析から、不正に入る真因を紐解いていきます。
そのために、次の3つの観点で分析しましょう。ここは経営分析、MBAの領域です。品質不正でも活用します!
- 外部環境の観点
- 組織の状況
- 担当レベルの動き
報告書の内容を引用して不正真因を特定しよう!
報告書の内容を断片的に引用しますので、
①外部環境の観点
➁組織の状況
➂担当レベルの動き
に注目して整理して、不正の真因を考えましょう。
・承認書どおりの方法では製造が困難⇒承認書と齟齬する製造
・ラボスケールの製造設備で得られたデータで承認得て、実生産の規模に拡大し、実生産を開始するとデータが変わることがあるため要注意
・変更管理を行う時間的余裕がなかった。変更管理すると1,2年期間が必要、承認が得られた新製品のシェアを他社に奪われる
・小林化工は、2000 年代半ばから生産量を急拡大させ、売上もそれに比例して右肩上がりの成長を遂げている。それに伴い、製造に従事する従業員数も増加しているが、製造現場には過大な負荷
・生産余力を考慮した製造スケジュールが組まれることはなく、出荷スケジュールから逆算
・販売目標が設定されると、それに必要な製造部門の人員を増強するという後追いの対応
・十分な教育や訓練を施すことのないまま、製造現場に投入
・製造部の生産余力を見据えた生産計画を立てる場としては十分に機能していなかった
・中期経営計画では、「2020 年度は 2017 年度を上回る国内 GE シェア 4.0%を実現する-これを実現すべく生産数量も 22 億錠体制から拡充し、30 億錠超体制へと移行する」と定められている。また、2020 年度の目標として、売上高 320 億円、生産数量 32 億錠。
・出荷スケジュールがまず決まり、それに合わせて品質管理試験を実施
・小林化工においては、上位者の指示は絶対であり、下からの問題提起が許されない風潮があった
135ページ、数万文字の膨大な報告書から、真因をうまく抽出するには、自分で仮説を立てて、それにあう内容を抜き出し、抜き出した内容どうしが整合していることが重要です。
いかがでしょうか? 他社の品質不正のメカニズムと全く同じです。
外部環境の観点
自分なりに整理してみてください。
まず、PEST分析では、
・薬事法の改正によるジェネリック医薬品の市場拡大
3C分析では、
・ジェネリック医薬品市場・競合・自社の競争関係
「小林化工は、2000 年代半ばから生産量を急拡大させ、売上もそれに比例して右肩上がりの成長を遂げている」の報告書に書いていますが、なぜ急成長させたかったんでしょうか?
組織の状況
・急成長に成功したら、トップの権力はどうなりますか?
・急成長はムリな目標必達、コスト(C)・納期(D)の圧力もかかりやすくなります。QCDバランスは大丈夫でしょうか?
・モノ言う風土や、改善する空気や余裕がなくても、コミュニケーション、風土、標準化などはしっかりできるんでしょうか?
担当レベルの動き
・急な採用としてもいきなり戦力にはなりませんよね。
・組織が機能不全していたら、担当個人はどうなりますか?
品質・安全などは担保される環境でしょうか?
➄品質不正に至った真因
QCDバランスはどう崩れたか?
不正が起きた原因は、他社事例と同様に、QCDバランスの崩れです。しかも、QCDバランスを崩す圧力をかけたのは、経営陣です。
QCプラネッツでは、分析結果をさらに、「QCD」を使って整理します。
組織や個人を是正させても、外や上からの過度な圧力がかかると効果がありません。経営者はどんな中計を描いていたか?が最も重要なポイントです。
身の丈以上の成長は、安全・品質・環境・コンプライアンスを軽視し、自滅するパターンです。
⑥その後の結末
当社が製造・販売してきた医薬品のうち、医療上の必要性が高い一部医薬品については、他社へ承継するなどして安定供給に支障を生じさせないよう、引き続き最大限の努力をいたします。また、その余の医薬品については、2022年1月31日付で全製品の自主回収に着手しており、今後は、薬価削除、承認整理の手続きを行って参ります。その後、当社は2023年4月までに製造販売業許可を廃止し、製薬会社としての一切の許認可を廃止する予定ですが、睡眠誘導剤の成分を混入させてしまった経口抗真菌剤イトラコナゾール錠により健康被害に遭われた方々への補償を最後まで責任を以って行って参ります。
医療関係者の皆様および患者様ならびにお取引先様には、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げるとともに、何卒ご理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
事業継続が厳しい状況に陥っています。
ある意味、自業自得ですが、ここで問2を再掲します。
不正は自滅の始まりです。でも、なぜ無茶な経営をし続けたのでしょうか?
経営陣はなぜ無茶な圧力をかけたのか?あるいは、外部から圧力がかかっていたのでしょうか?
ここが分からないと、他社で同じ不正が再発します!
トップの支配者による無理な圧力で、失墜するケースは何社もあります。トップの心境がわからないとまた不正が再発します。これについては別記事で解説します。
⑦とるべき対応策
本当の真因がわかるにはもう少し情報がほしいところですが、とるべき対応策は、他社の不正事例と同じではないかと考えています。
●何社も品質不正の分析をすると、取るべき対策は1つに抽象化できます。
組織の経営そのものを是正・修正しないと再発する。
●対応策については、関連記事で詳しく解説しました。批判で終わらず、建設的な改善提案と成功へつなげましょう!
【必読】品質不正からの名誉挽回方法がわかる 品質不正に陥った組織をどうやって立て直すかわかりますか?本記事では、批判で終わる品質不正の記事とは違って、信頼回復・改革に何が組織には必要なのかをわかりやすく解説します。誰かに任せるのではなく、自分事として自らリーダーシップをとって良い組織に生き返らせましょう!社会は温かく見守るべきです。 |
がんばりましょう!
まとめ
「小林化工の品質不正を学ぶ」を解説しました。
- ①品質マインド
- ➁品質不正の内容・被害
- ➂発覚した経緯
- ➃品質不正分析で見逃がしてはいけない情報
- ➄品質不正に至った真因
- ⑥その後の結末
- ⑦とるべき対応策
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