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混合系直交表L18の擬水準法がわかる

ロバストパラメータ設計

「混合系直交表L18を使った擬水準法がわからない」などと困っていませんか?

こういう疑問に答えます。

本記事のテーマ

混合系直交表L18の擬水準法がわかる

おさえておきたいポイント

  • ①混合系直交表L18の擬水準法とは
  • ➁L18の擬水準法のデータの構造式
  • ➂L18の擬水準法の平方和の分解
  • ➃L18の分散の期待値と分散分析
  • ➄母平均の点推定と区間推定
混合系直交表に擬水準法を使う人はほぼいませんが、
考え方は理解しましょう。いい勉強ネタです!

①混合系直交表L18の擬水準法とは

「混合系直交表L18」の「擬水準法」を解説しますが、先に、

  1. 直交表混合系L18
  2. 擬水準法

を復習しましょう。

混合系直交表L18とは?

関連記事で解説しています。ご確認ください。

混合系直交表L18がわかる
混合系直交表L18が使えますか? 本記事ではロバストパラメータ設計でよく使われれる直交表L18のパターン、データの構造式、平方和の分解、分散分析表、分散の期待値、母平均、有効繰返数、区間推定の一連の解法を解説します。平方和で注意すべき点があるので、必読です!

擬水準法とは?

擬水準法とは、2つケースがあります。

  1. 不足する場合(2水準系に3水準因子を割り当てる場合など)
  2. 余る場合(3水準系に2水準因子を割り当てる場合など)

関連記事で両方を解説しています。ご確認ください。

不足する場合

擬水準法(不足する場合)の分散分析・区間推定が解ける【必見】
)水準を割り当てたい場合を擬水準法と読んでいる。 α=2なら、mは自然数よりm=1 α=3なら、mは自然数より

余る場合

擬水準法(余る場合)の分散分析・区間推定が解ける【必見】
a=3なら、mは自然数よりm=1 a=4なら、mは自然数よりm=1,2 a=2なら3水準系の実験で因子Aだけが

今回は、
「余る場合(3水準系に2水準因子を割り当てる場合)」
を解説します。

混合系直交表L18の擬水準法とは?

今回解説する混合系直交表L18の擬水準法とは

3水準の1列を2水準に割当てる場合
つまり、通常のL18は\(2^1×3^7\)であるが、
L18は\(2^2×3^6\)に割当てる場合を擬水準法として考える

具体的に直交表を作ると下表になります。

L18 A B C D E F G e data
1 1 1 1 1 1 1 1 1 12
2 1 1 2 2 2 2 2 2 14
3 1 1 3 3 3 3 3 3 16
4 1 2 1 1 2 2 3 3 8
5 1 2 2 2 3 3 1 1 10
6 1 2 3 3 1 1 2 2 11
7 1 3(2) 1 2 1 3 2 3 14
8 1 3(2) 2 3 2 1 3 1 4
9 1 3(2) 3 1 3 2 1 2 10
10 2 1 1 3 3 2 2 1 6
11 2 1 2 1 1 3 3 2 18
12 2 1 3 2 2 1 1 3 15
13 2 2 1 2 3 1 3 2 11
14 2 2 2 3 1 2 1 3 13
15 2 2 3 1 2 3 2 1 8
16 2 3(2) 1 3 2 3 1 2 12
17 2 3(2) 2 1 3 1 2 3 14
18 2 3(2) 3 2 1 2 3 1 20

特徴的なのが、

B列の3水準目の実際は2水準ですが、
3水準として扱う点が擬水準法の特徴です。

L18の擬水準法について、
●データの構造式
●平方和の分解
●母平均の点推定と区間推定
を解いてみましょう。

本記事は、実験計画法ですが、L18はロバストパラメータ設計によく使うので、ロバストパラメータ設計の章で解説します。

なお、実験計画法については、しっかりまとめた関連記事がありますので、確認ください。70記事もある超大作です。

究める!実験計画法
QCプラネッツが解説する究める実験計画法。多くの教科書がある中、勉強してもどうしても分からない、苦労している難解な箇所をすべて解説します。多元配置実験、乱塊法、分割法、直交表などなど多くの手法を個別に公式暗記せず、データの構造式をみればすべて導出できる新しい実験計画法を解説します。

➁L18の擬水準法のデータの構造式

擬水準法を適用しても、各列の統合などの変化はないため、データの構造式は擬水準法を使わない場合と同じです。

なので、データの構造式は

\(x\)=\(μ\)+\(a\)+\(b\)+…+\(g\)+\(ε\)
(8番目を\(ε\)とします)

もう少し詳細に書くと、

(\(x_i-\bar{\bar{x}}\))=(\(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}}\))+…+(\(\bar{x_{gi}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{ji}})+6\bar{\bar{x}}\))

と書けますね。慣れないと難しいかもしれませんが、頑張っていきましょう。

➂L18の平方和の分解

データの構造式から平方和を計算

データの構造式を再掲すると、
(\(x_i-\bar{\bar{x}}\))=(\(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}}\))+…+(\(\bar{x_{gi}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{ji}})+6\bar{\bar{x}}\))
ですね。

これを2乗和すると、各項の平方和とその合計が全体の平方和に一致します。
ただし、式で証明するのは、大変なので、直交表を使って後で証明します。

証明したい式は
\(\sum_{i=1}^{18}( x_i-\bar{\bar{x}})^2\)
=\(\sum_{i=1}^{18}( \bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表1列目の平方和\(S_1\)に相当)
+\(\sum_{i=1}^{18}( \bar{x_{bi}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表2列目の平方和\(S_2\)に相当)
+…
+\(\sum_{i=1}^{18}( \bar{x_{gi}}-\bar{\bar{x}})^2\) (⇒直交表7列目の平方和\(S_7\)に相当)
+\(\sum_{i=1}^{18} ((x_i –(\bar{x_{ai}}+…+\bar{x_{gi}})+6\bar{\bar{x}})^2\)
(⇒直交表8列目の平方和\(S_8\)に相当)
です。

直交表を使って各列の平方和を計算

2水準系,3水準系の直交表各列の平方和を計算する公式があります。
もちろん自力で導出できます!関連記事で確認ください。

【本記事限定】直交表の各列の平方和の式は自力で導出できる【必見】
直交表の各列の平方和を導出する方法を知っていますか?公式暗記で済ませていませんか?本記事では、実験計画法の直交表の各列の平方和を導出する方法を詳しく解説します。本記事しか書いていない、直交表の知見を広げたい方は必見です。

公式は、

●2水準系の場合
\(S_[k]\)=\(\frac{(T_{[k]1}-T_{[k]2})^2}{N}\)
●3水準系の場合
\(S_[k]\)=\(\frac{(T_{[k]1}-T_{[k]2})^2+(T_{[k]2}-T_{[k]3})^2+(T_{[k]3}-T_{[k]1})^2}{3N}\)

この式を使って直交表の各列の平方和を計算します。

直交表L18の各列の平方和を計算

擬水準法を使う場合の一番注意すべき点は、

擬水準法を適用した列は
直交表から計算される平方和と
その列の実際の平方和は違う!

実際に平方和を計算しながら、注意点を解説していきます。

では、データを用意して、直交表各列の平方和を計算します。その結果は下表のとおりです。実際に計算してみてくださいね。

L18 A B C D E F G e データ
1 1 1 1 1 1 1 1 1 12
2 1 1 2 2 2 2 2 2 14
3 1 1 3 3 3 3 3 3 16
4 1 2 1 1 2 2 3 3 8
5 1 2 2 2 3 3 1 1 10
6 1 2 3 3 1 1 2 2 11
7 1 3 1 2 1 3 2 3 14
8 1 3 2 3 2 1 3 1 4
9 1 3 3 1 3 2 1 2 10
10 2 1 1 3 3 2 2 1 6
11 2 1 2 1 1 3 3 2 18
12 2 1 3 2 2 1 1 3 15
13 2 2 1 2 3 1 3 2 11
14 2 2 2 3 1 2 1 3 13
15 2 2 3 1 2 3 2 1 8
16 2 3 1 3 2 3 1 2 12
17 2 3 2 1 3 1 2 3 14
18 2 3 3 2 1 2 3 1 20
1の合計 99 81 63 70 88 67 72 60 216
2の合計 117 61 73 84 61 71 67 76
3の合計 0 74 80 62 67 78 77 80
216 216 216 216 216 216 216 216 平方和計
平方和 27 34.33 24.33 41.33 67 10.33 8.33 37.33 250

なお、全体の平方和は
S=\(\sum_{i=1}^{18}x_i^2-\frac{(\sum_{i=1}^{18}x_i)^2}{18}\)
=280
になり、混合系直交表の全平方和は250と280より少なくなり、要注意です。

さらに、

擬水準法を適用したB列の平方和は、
直交表を使わずに平方和を計算すると
●\(S_B\)=\(\frac{81^2}{6}+\frac{135^2}{12}-\frac{216^2}{18}\)
=20.25
●直交表の\(S_B\)=34.33
と異なっています。

混合系直交表の擬水準法は
●総平方和と直交表全列平方和の和と違う
●擬水準法を適用した列の平方和は直交表からの値とは違う
の2点に注意が必要!

だったら、直交表L16などのスタンダートな直交表で擬水準法を適用しないケースを用意した方がよさそうですね。

昭和の時代はデータを取るのが非常に手間だったけど
現代はデータは簡単に取れるので、
わざわざ混合系直交表や擬水準法を
使わないといけない理由が
ピンと来ません。だから
時代背景を理解しよう!

➃L18の分散の期待値と分散分析

平方和の分解を確認できたら、QCプラネッツのこだわりである、
分散の期待値と分散分析表を確認しましょう。

先に結論を述べると、

混合系直交表の分散の期待値は綺麗に導出できない。式を立てて終わり

です。

1列目の平方和は
\(S_1\)=\(\sum_{i=1}^{18}(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\)
と書けます。

概略的な式変形になりますが、期待値の平方和を計算すると
E[\(S_1\)]=E[\(\sum_{i=1}^{18}(\bar{x_{ai}}-\bar{\bar{x}})^2\)]
=E[\(\sum_{i=1}^{18}((\bar{x_{ai}}-\bar{x_{ea}})-\bar{\bar{x}})^2\)]

= E[\(\sum_{i=1}^{18}( \bar{x_{ai}}-\bar{x_{ea}}) ^2\)]+ E[\(\sum_{i=1}^{18}(\bar{\bar{x}}^2\))]
=ここから文字式で計算ができません。

おそらく、
E[\(S_1\)]= E[\(\sum_{i=1}^{18}( \bar{x_{ai}}-\bar{x_{ea}}) ^2\)]+1×\(σ_e^2\)
となるはずです。これ以上、首をつっこんでも収集つかないので、一旦止めます。

擬水準法を適用した列の分散の期待値はなおさら難しくなりますね。一旦止めます。

直交表の全列も同様に途中まで解けます。
分散分析表をまとめます。

S Φ V F E[V]
A 27 1 27 1.45 ??+\(σ_e\)
B 34.33
20.25
1 17.17 0.92 ??+\(σ_e\)
C 24.33 2 12.17 0.65 ??+\(σ_e\)
D 41.33 2 20.67 1.11 ??+\(σ_e\)
E 67 2 33.5 1.79 ??+\(σ_e\)
F 10.33 2 5.17 0.28 ??+\(σ_e\)
G 8.33 2 4.17 0.22 ??+\(σ_e\)
e 37.33 2 18.67 \(σ_e\)
235.92 14

分散の期待値が??としていますが、話を続けます。

➄母平均の点推定と区間推定

次の2つを考えましょう。

例題

次の母平均と区間推定を求めよ。
(i) \(μ_{A1}\)
(ii) \(μ_{A1B2C1}\)

データの構造式から母平均を計算

まず、データの構造式から母平均を計算します。
関連記事はここです。

【簡単】データの構造式から母平均の点推定が導出できる
実験計画法が難しい、分散分析した後、最適条件の母平均の点推定を求める式が、実験によって変わるため、公式暗記に困っていませんか?本記事では、データの構造式さえ理解すれば、すべての実験において、母平均の点推定値を求める式が導出できます。早く実験計画法をマスターした方は必見です。

●\(μ_{A1}\)=\(μ+a_1\)
=\(μ+(\bar{a_1})\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+\((\bar{x_{a1}}-\bar{\bar{x}})\)
=\(\bar{x_{a1}}\)⇒(式1)
=99/9=11

●\(μ_{A1B2C1}\)=\(μ+a_1+b_2+c_1\)
=\(μ+\bar{a_1}+ \bar{b_2}+ \bar{c_1})\)
=\(\bar{\bar{x}}\)+(\(\bar{x_{a1}}-\bar{\bar{x}}\))
+(\(\bar{x_{b2}}-\bar{\bar{x}}\))+(\(\bar{x_{c1}}-\bar{\bar{x}}\))
=\(\bar{x_{a1}}\)+ \(\bar{x_{b2}}\)+ \(\bar{x_{c1}}\)-2\(\bar{\bar{x}}\) ⇒(式2)
=99/9+135/12+63/6-2×216/18
=8.75

データの構造式から有効繰返数と区間推定を計算

次に区間推定を求めたいので、有効繰返数をデータの構造式から計算します。関連記事はここです。

【重要】データの構造式から有効反復数が導出できる
実験計画法が難しく、分散分析した後、最適条件の母平均の点推定から有効反復数の導出方法がわからず、田口の式や伊奈の式を丸暗記していませんか?本記事では、データの構造式さえ理解すれば、すべての実験において、母平均の点推定値から有効反復数が導出できますことを解説します。早く実験計画法をマスターした方は必見です。

●\(μ_{A1}\)の場合は
\(μ_{A1}\)=\(μ+a_1\) ⇒((式1)より)
=\(μ+(\bar{a_1}+\bar{e_a})\)
V[\(μ_{A1}\)]=V[\(\bar{e_a}\)]
=\(\frac{1}{9}σ_e^2\)=18.67/9=2.07

●\(μ_{A1B2C1}\)の場合は
\(μ_{A1B2C1}\)=\(μ+a_1+b2+c1\)
=\(\bar{x_{a1}}\)+ \(\bar{x_{b2}}\)+ \(\bar{x_{c1}}\)-2\(\bar{\bar{x}}\) ⇒((式2)より)
=\(μ+a_1+\bar{e_a}\)+\(μ+b_2+\bar{e_b}\)+\(μ+c_1+\bar{e_c}\)-2\((μ+\bar{\bar{e}})\)
=\(μ+a_1+b_2+c_1\)+\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)
V[\(μ_{A1B2C1}\)]=V[\(μ+a_1+b_2+c_1\)+\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)]
=V[\((\bar{e_a}+\bar{e_b}+\bar{e_c}-2\bar{\bar{e}})\)]
=(\(\frac{1}{9}+\frac{1}{12}+\frac{1}{6}-2×\frac{1}{18})σ_e^2\)
=\(\frac{1}{4}σ_e^2\)=18.67/4=4.67

また、推定区間を求めるt(Φe,α=t(2,0.05)=4.303)より、
●\(μ_{A1B2C1}\)=8.75(=母平均)±4.303(=t(Φe,α))×2.16(=\(\sqrt{V}\))=-0.544,18.044
となります。

まとめ

「混合系直交表L18の擬水準法がわかる」を解説しました。

  • ①混合系直交表L18の擬水準法とは
  • ➁L18の擬水準法のデータの構造式
  • ➂L18の擬水準法の平方和の分解
  • ➃L18の分散の期待値と分散分析
  • ➄母平均の点推定と区間推定


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